絶望の世界 僕の日記  <腐蝕編>  第4章  「絶望の時」 -------------------------------------------------------------------------------- 第一三週 「白紙」 2月1日(月) 曇り 今日が最後の事情聴取でした。そこで僕はとても嫌な事実を知りました。 未だに信じられない。信じたくない。でも事実だ。 僕は今まで何て事をしてきたんだろう。何を信じてたんだろう。 何故、こんな事に。 2月2日(火) 晴れ 早紀はまだ眠ったままです。ベットの横に立ったまま、僕は同じセリフを繰り返してました。 「早紀。あれは僕じゃない・・・・・・。」 誰も見てなかったはずなのに。見てたのは僕だけだったはずなのに。 早紀は見ていた。そして、それが荒木さんだとは気づかなかった。 僕だと勘違いした。 2月3日(水) 曇り 早紀は優しかった。僕の事を人殺しだと思ってもすぐには警察には通報しなかった。 知らないフリして普通に振る舞ってた。きっと早紀はこう考えてたんでしょう。「私だけの秘密にしておこう。」 でもその考えは崩れてしまった。警察に通報したのは12月27日。以後僕はずっと警察に見られていた。 早紀を犯したとき、テレビのボリュームを大きくしてなかったら僕は捕まってたかもしれません。 早紀が本当に初詣に行ってなかったら、やっぱり僕は捕まってたと思います。 早紀は何故通報したのか。答えは簡単です。「私だけの秘密」じゃないことを知らされたから。 杉崎先生が余計な事を。 2月4日(木) 晴れ 杉崎先生。あの人は僕を疑ってた。僕が奥田を殺したと思ってた。何も見てないくせに。 疑われるは構わない。だから先生に「お前が殺ったんだろ?」と聞かれた時僕は何も答えなかった。 荒木さんが殺したんだから僕が疑われても何の問題はない。わざわざ荒木さんが殺したと言う必要もない。 でも問題は起きた。先生はその間違った推測を信じ、それを早紀に告げた。12月24日の事でした。 先生は自分の推理に酔ってたのかもしれない。デジカメの存在を知ってるのは先生だけだったから。 証拠を見つけた探偵気取りだったんだ。だから、その推理を披露したかったんでしょう。僕が犯人であると。 イジメの事実を隠蔽しようとしてたんだから警察に言うわけありません。代わりに見つけたのが、早紀。 妹なんだから告げ口するわけ無いとでも思ったんでしょうか。逆の結果を招く事になるとも知らずに。 そして早紀は知ってしまった。「自分だけの秘密」を他に知ってる人がいたことを。 早紀が冷たい態度をとるようになった時、僕は見当違いな推理をしてました。もっと深く考えるべきだった。 もう、遅い。 2月5日(金) 曇り 身内が犯人と知ったら、僕ならどうするだろうか。その事を自分しか知らないのなら、たぶん黙ってる。 知ってる人が他にもいたら?それでも黙ってると思います。自首を勧める事もしないと思います。 それが早紀ならなおさらです。皆にバレても否定し続ける。愛してるから。何処へも行って欲しくないから。 でも早紀は通報した。それは事件の解決を長引かせるだけの行為だったけど、そんな事は重要じゃない。 問題は「何故通報したか」です。しかも僕に内緒で。その理由を考えてると頭が痛くなってきます。 早紀は僕と一緒にいたくなかったのか?何処かへ行って欲しかったのか?消えて欲しかった? 僕は早紀を愛してる。今でも変わらない。でも早紀は?早紀は本当に僕を愛してた?それどころか。 愛して、なかった? 2月6日(土) 晴れ 眠り続ける早紀。早紀の中では僕は人殺しのままです。僕は必死に語りかけました。 あれは僕じゃない。荒木さんだったんだ。早紀は荒木さんの罠に引っかかっただけなんだよ。 だから早紀。目を覚ましてよ。起きて僕の話を聞いてよ。そしたら誤解も解けるから。 それに僕たちは愛し合ってるんじゃないか。一緒に楽しい時間を過ごしたじゃないか。 まさか早紀は「犯された」なんて思ってないよね?僕は早紀を愛してる。早紀も僕の事を愛してるだろ? 早く起きてよ。起きて「お兄ちゃんを愛してる。」と言ってくれよ。ねぇ早紀。起きてよ。目を覚ましてよ・・・・。 僕はいつの間にか涙を流してました。早紀の肩を揺さぶり、泣きながら話しかけてました。 どれくらいそうしてたのか。ふと早紀を見ると、口が少し動いてます。何か喋ってる!? その声はとても小さく、うっかりすると聞き逃した。僕は慎重に耳を近づけ、聴覚に集中しました。 「・・・・・・・・・・・・・・トオルさん・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・助けて・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」 誰だ。 2月7日(日) 曇り トオル。こいつのせいで早紀の心が僕に向いてくれない。 おそらくこのクソ野郎こそが早紀の処女を奪った男に違いない。許せない。 早紀が目覚める前に消さなきゃ。最初からいなかった事にしないと。早紀には僕しかいないんだから。 第一早紀が入院してから一度でもお見舞いに来たか?来てないだろ?そんな奴に早紀を抱く権利は無い。 死ね死ね死ね。死んでしまえ。早紀を奪った男。今でも僕と同じ空気を吸ってると思うだけで許せない。 僕が殺してやる。見つけだして、僕の手で、殺さなきゃ。早紀は僕のだ。他の奴なんかにとられてたまるか。 消してやる。 第一四週 「泥濘」 2月8日(月) 晴れ 早紀の部屋をあさってみました。トオルに関する記録がないか調べました。 写真は女の子同士ばかりです。手帳を見つけましたが有力な情報は得られませんでした。 「今日はデート」とかハートマーク付きでメモされてるのを見ると無性に腹が立ってきます。 他に何かないのか?そう思った瞬間、ソレが目に入ってきました。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・パソコン。 あまりに堂々とし過ぎて気づかなかった。最近じゃ女の子がパソコンやってたって全然おかしくない。 渡部さんや荒木さん、あの奥田でさえパソコン講習を受けて面白がってたっけ。 僕は早紀のパソコンを起動させました。どこから手に入れたのかかわいらしい壁紙になってます。 そして、見つけました。デスクトップにショートカットが作成されてました。ファイル名「私の日記」。 これさえ読めば。 2月9日(火) 晴れ 「私の日記」には僕の知らない早紀がいました。色んな事が有りすぎてとても1日じゃ書き切れません。 早紀はホームページを持ってました。そこに「私の日記」がアップされてました。 「希望の世界」と名付けられたそのページは女の子らしくかわいくレタリングされてます。 ハンドルネームは「sakky」。掲示板はそこそこのにぎわいを見せてました。 最近は書き込みが少なくなってるようです。「sakky最近どうしたの?」等の書き込みがちらほら見られます。 過去ログを見てみると、奴がいました。「トオル」。早紀とこいつはネット上で知り合った。 日記は「受験勉強は大変」みたいな内容だったけど、「トオル」が登場してからは殆どその話ばかりでした。 出会い、オフ会、告白、そして、そして、せせせ性行為に至るまでが克明に記されてます。 さすがに行為の内容はまでは記されてなかったので少し安心しました。早紀はそんな淫乱な娘じゃない。 さらに、トオルにフラれた事まで書いてます。確かに約3ヶ月前から「トオル」は掲示板に姿を現してない。 逃げやがったな。 2月10日(水) 曇り 早紀を汚しておいて逃げるなんて許せない。絶対につきとめてやる。 まずはトオルと早紀が出会った所を突き止めなくてはいけません。 「私の日記」によると、二人はあるチャットタウンで知り合ったそうです。「希望の世界」にもリンクされてました。 そこは俗に言う「出会い系」のページで、地域別に部屋がわかれてました。 片っ端から部屋を訪ねてみましたが、チャットなので掲示板のような過去ログは残ってませんでした。 トオルは何処にもいません。奴はネットから去ってしまったんでしょうか?そうだとしても僕は逃がさない。 早紀の残したあらゆる記録を全て調べて、絶対突き止めなければ。早紀を完全に僕のモノにするために。 必ず見つけだしてやる。 2月11日(木) 雪 僕は「私の日記」を舐めるように読み返しました。何処かにトオルに関するのヒントはないか。 そして、ある程度トオルの像が見えてきました。 トオルは僕の家の近くに住んでいる。それが具体的にどのくらい近いのかはわかりません。 ただ、早紀と地元民トークで盛り上がってたのは確かです。そこから話が進んでオフ会に至った。 そこで早紀は自分の知ってる高校にトオルが通ってることを知り、色々受験の相談をしてた。 残念ながらその高校名は書いてありませんでした。ちゃんと書いてくれないと困ります。 結局わかったのはこれだけですが、「近くにいる」とわかったのは大きな収穫になります。なぜなら。 正体さえわかればすぐに消せる。 2月12日(金) 曇り 僕はバカだ。こんな簡単な事に気がつかなかったなんて。 地元トークで盛り上がった。受験の相談をした。オフ会の約束をした。日記にはそう書いてありました。 ここで疑問が沸いてこなかったなんて冷静じゃなかったんだ。少し考えればすぐわかる事なのに。 「何処で?」何処でそんな話をしてた?チャットで?みんなが見てる前で?もっと手軽なのがあったろ? メール交換。早紀のメールをチェックしてなかった。日記ばかり読んでて見えてなかった。 早速チェックしてみました。早紀らしくポストペットなんか使ってます。 やっぱり。早紀は奴とメール交換してた。メールはちゃんとログが残ってるので実に読み応えがありました。 待ってろよトオル。 2月13日(土) 曇り 僕もバカだったけどトオルはもっとバカだ。自分の住所をメールで伝えるなんて阿呆だ。 早紀の「何処に住んでるの?」とのメールに「ライオンズマンション」と返事を書いてた。 ここら辺でライオンズマンションは1つしかない。僕の学校の近くにあるアレだ。 さらに間抜けなことに、トオルは家の部屋番号まで書いてやがります。 早紀が「そこ私も知ってるよ。」と書いたら「417号室だから今度外から見上げてごらん。」とかぬかしてました。 そうか。そこに住んでるのか。見上げるだけなんかじゃつまんない。今度遊びに行ってやるよ。 絶対行くよ。 2月14日(日) 晴れ 今日はバレンタインデー。本当なら早紀からチョコレートが貰えたはずなのにトオルのせいで貰えません。 トオルが存在する限り早紀は完全に僕のモノにはならない。そんなこと許されるわけがない。 トオルには消えてもらいます。最初からそんな奴存在しなかったことにしておけばいいんです。 居場所も突き止めた。後は奴が死ぬだけで全てが丸くおさまりまあす。来年からは早紀からチョコが貰える。 今度は奥田の時と違って荒木さんのように代わりに処刑してくれる人はいません。僕がやるしかない。 やってやる。 第一五週 「絶望」 2月15日(月) 晴れ 奴のマンションを見てきました。あれなら何時でも突入できそうです。とりあえず今日はそれだけで帰りました。 さて、どうやって殺ってやろうか。できるだけ苦しませてあげたい。ナイフで突き刺してやろうか? なんか考えてるだけで楽しくなってくる。どうせトオルなんて死んだって構わない様な奴なんだろうな。 眼鏡かけてデブでアニオタで臭くてパソコンマニアで・・・・・・・・・・そんな奴に早紀は犯されたのか。 絶対殺す。 2月16日(火) 曇り ナイフを買ってきました。特に面白い殺し方が思いつかなかったので結局ナイフに落ち着きました。 でも以前映画か何かでナイフで刺す時ねじってやると相当痛いとか言ってたのでこれでいいかもしれません。 誰かに見られない限り問題は無いはずです。トオルと僕は直接面識があるわけじゃありません。 容疑者の中に僕の名が連なることはないでしょう。友人関係を洗ったって僕はでてこない。 だから安心して殺れる。 2月17日(水) 晴れ なんだかドキドキします。人を殺すのにこんなに緊張するとは思いませんでした。 もし誰かに見られたらどうしよう。やっぱり逃げるしかないか。逃げ切れなかったら? 僕も荒木さんのようになってしまうんでしょうか。それは嫌だ。早紀に会えなくなっちゃうじゃないか。 何の為に殺したのかわからなくなる。あんなクズの命のために僕の人生を棒に振りたくない。 だから、慎重に事を進めないと。本当は今すぐにでも殺しに行きたい。でもそれだと失敗するかもしれない。 ここはこらえて、緊張をほぐしてから。2,3日間をおいて落ち着いたら殺ろう。 焦りは禁物。 2月18日(木) 雨 トオルの確認は当日でいい。どうせパソオタだからすぐにわかる。今は落ち着く事に専念しないと。 それに、見たらその場で殺してしまうかもしれません。あくまで冷静に。感情的になっていはいけません。 当日はまず部屋の確認。そして近くでそれらしき人物が帰ってくるのを待つ。 トオルらしき人物が来たら尾行。奴の家は4階だから階段を上る。その時がチャンスです。 一人になった瞬間、後ろからナイフで刺す。ナイフは刺しっぱなしでそのまま逃亡。これでいこう。 奴が夜に帰ってくるのが理想的だけど、人気がないようなら何時でも殺ってしまおう。 人通りが多いようなら次の日に持ち越せばいい。いくらでも待ってやる。 いよいよです。 2月19日(金) 雨 明日殺そう。もう充分落ち着いた。計画も立てたし、あとは予定通り行動するだけです。 全部終われば早紀は完全に僕のモノになる。もうこれ以上誰にも邪魔はさせません。 そうだ。早紀の目が覚めたら何処かに行こう。早紀さえいれば親も必要ない。早紀となら何処へでも行ける。 逃げてしまおうか。誰もいないところへ。アテはないけど早紀が居るならどんな状況にも耐えられる。 二人だけの世界に旅立とう。夢が広がっていく。僕らの未来は希望でいっぱいなはずです。 明日トオルをキッチリ殺して、早紀の目を覚まして、何処か遠いところへ。 明日は運命の日になる。僕と早紀が新しいスタートから始められるように、儀式を済ませないといけません。 トオル。死ね。 2月20日(土) hml 酷いよ。酷すぎる。そんな事があり得るなんて・・・・!そんなのあっちゃいけない事なのに。 僕は何を?何をしようとした?何を望んでた?トオルを消すこと?そうだよ。それは叶ったじゃないか。 あああああああ。願いは、望みは、目的は達成した。これで、これで良かったはずなのに。良かったのに。 何故?なぜ?ナゼ?何故こんな思いをしなくちゃいけないんだ?僕は、何だったんだ? 今朝早く、僕はナイフを持ってライオンズマンション行った。トオルを待ち伏せするつもりだった。 まず、トオルの部屋番号と正確な場所を確認した。郵便受けで417号室のを確認してみた。 そこで僕は・・・・!ちくしょう。なんでこんな所で奴の名前が出て来るんだよ!そんなことあってたまるかよ! そこで僕は知ってしまった。信じられない。信じたくない。こんなの信じることなんて出来るわけない。 急いで家に戻りました。信じられないけど、確認しなくちゃいけない。事実を知らなきゃいけない。 家に着いたらすぐに学校の住所録を見ました。奴の住所は・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。 あああああああああああああああああ!!!書いてある!!「ライオンズマンション417号室」って!! 畜生!畜生!畜生!なんでだよ。なんでトオルがお前なんだよ。なんでなんだよ!!答えろよぉ!! 奥田ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!! 2月21日(日) 曇り 消えてゆく。僕の信じてた何もかもが。 奥田徹。あいつは僕と早紀を弄んでた。僕たちは踊らされていたんだ。 12月1日。奴は何て言ってた?「今度お前の妹に例の写真見せてやるな。」だって? なんで知ってたんだ。僕に妹がいることを。僕は学校で家族の話をした事なんて1度もない。 知ってて当たり前だった。奴はこの時既に早紀と付き合ってる。僕だけが何も知らなかった。 早紀。奥田の何が良かったんだ。あいつは荒木さんを犯したり、僕をいじめたりする最低野郎なのに。 そんなゴミ野郎に早紀は・・・・・・・・・・・・・・僕は・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。 そうか。そういうことだったのか。全部逆だったんだ。ずっと疑問に思ってたけど今なら理解できる。 「奥田は何故僕をいじめるようになった?」 答えは簡単だ。僕は、早紀の兄だからいじめられたんだ。早紀の兄だから、目を付けられた。 奴はクズなんだから、誰かをいじめる理由なんてそんな事で良かったんだ。 畜生。 第一六週  「引導」 2月22日(月) 晴れ 早紀の病室に行きました。僕がこんなに絶望してるのに何も知らない早紀。 早紀の中では奥田はイイ奴のままなんだろうな。かわいそうな早紀。騙されてるのに気づかないなんて。 そっと早紀の手を握ると何故かボロボロ涙がこぼれてきました。どうして僕は泣いてるんだろう? 早紀を奥田に奪われたから?奥田に負けたから?悔しいから?早紀が、僕を愛してくれてないから? そんなことない!早紀は絶対僕のことが好きなはずだ。奥田よりもずっと僕の方がいいと思ってるはずだ。 そう思ってる所に、病室に医者が入ってきました。 僕に、というより早紀の身内に話があるとのことでした。話を聞いた僕は何とも言えない気持ちになりました。 ・・・・・・・早紀が、もうじき目覚める。 話によると、徐々に回復の兆しが見えてきてもう1週間もすれば目を覚ますだろう、とのことでした。 僕はどうすればいいんだろう。 2月23日(火) 曇り インターネットで睡眠薬を販売しているページを見つけました。早速申し込んでおきました。 睡眠薬を大量に飲めば苦しまずに死ねます。死ぬことは怖くありません。この世に未練はないし、それに・・・・ 早紀は起きたら僕のことを好きだと言ってくれるかな?言ってくれるよね。絶対に。 確かめたくはない。もしかしたら言ってくれないかもしれない。奥田の毒がまだ残ってるかもしれない。 今のままなら確かめる必要もない。眠ったままなら、確実に僕のことを好きでいてくれる。そう信じていられる。 早紀。一緒に何処かへ行こうって約束したよね。他の誰もいない何処かへ。二人だけの世界へ。 怖がることなんかないよ。早紀は何もしなくていいんだから。旅の準備は全部僕がするから。だからね、早紀。 一緒に、逝こう。 2月24日(水) 雨 奥田に関って以来、僕はとても嫌な思いをしてきました。でもそれも終わりです。 これ以上不愉快な気分になることはありません。みんなとは違う世界に行くから。 もう誰にも関わらないで済みます。結局、僕に残されたのは早紀だけでした。 それでも構わない。他には何もいらない。早紀がいれば充分。 1月3日だったかな?あの日に僕は誓った。「早紀はもう離さない」と。 最期まで、離さない。 2月25日(木) 天気なんか知らない 今日睡眠薬が家に届きました僕は家に居たので直接受け取りましただから親にはバレてません今更親にバレ てもどうでもいいんだけどなんとなく隠してしまいました睡眠薬は今手元にありますこれを早紀と一緒に飲めば 二人は旅立てるなんて素晴らしいんでしょう僕一人なら地獄に落ちてしまうかもしれないでも早紀は絶対に天 国に行けるはずだから一緒に行く僕も天国へ行けるはずです僕は今とても幸せを感じてますどれだけ絶望し ても諦められない夢それは世界で早紀と二人だけになることそれがかなうんだから僕の面白くもない人生も最 期の最期で少しはマシになったのかなそれとも今までが酷すぎたのかな僕にはどっちかわからないそんなこと どうでもいいや後少しで夢がかなうんだからこんなつまんない世界とはもうお別れだから早紀と二人きりになれ るんだからここは本当につまんない世界だったなあ奥田にはいじめられるし荒木さんにもいじめられるし渡部さ んにもいじめられるし復讐してやったと思ったら早紀の元恋人が奥田だったし知らないままならこんなに絶望し ないで済んだのかな許せないって言ってみたって奥田はとっくに死んでるんだからどうすることもできないしでも やっぱり許せない畜生僕より先に手を出してたなんて考えたくもない早紀の体は汚されちゃってたんだ清めな いと汚れを落としてあげないと奴の毒を抜いてあげないと天国に行けば早紀は汚れた肉体を捨てられる綺麗 な魂だけになれる僕が連れてってあげるよ僕も一緒に行くから僕が導いてあげるよ素敵な世界へ 2月26日(金) 眩しいくらいに晴れ 今から逝ってきます。だから僕の日記もこれで終わりです。 さようなら。 2月27日(土) 雨 僕は死にました。早紀も死にました。あれ?じゃあこの日記を書いてる僕は誰? 日記を読み返してみなきゃ。ええと・・・・薬を手に入れて・・・・・・これから飲もうって・・・・・・・・・それから・・・ ・・・・二人で逝こうって無理矢理大量の薬を押し込んで・・・・・・・・僕もとてもたくさん薬を飲んで・・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・怖くなって吐き出したんだ。 そうだそうだ。そうだった。怖くなって薬を全部吐き出しちゃったんだ。 でも早紀はそのまま死んじゃったんだ。ごめんね早紀。ごめんねごめんねごめんねごめんねごめんね。 早紀、僕を許して。やっぱり死ぬのはイヤなんだよ。一緒に逝けない。逝きたくない。 死にたくない。どんなにつまんなくても、どんなに酷い人生でも、どんなに惨めでも、やっぱり生きていたい。 生きる。生きなきゃ。僕が生きなくてどうする。なんだろうこの感じ。とてもとても強い義務感を感じる。 他に何も考えられない。どんな不自然な事も、狂ったことも、全て受け入れてでも僕は生きなきゃいけない。 生きなければ。 2月28日(日) 今日も雨 壊れた現実はもう元には戻りません。 何かがおかしい。そう思ったって引き返す事なんてできない。 全てを失った僕にはどうすることもできないんだから。だから、生き続ける。 狂い続ける。 - 第4章 絶望の時 -  完 腐蝕編 終了 ・・・・・・・・・・・・虚像編へ