絶望の世界 僕の日記  <虚像編>  第6章  「悠久の闇」 -------------------------------------------------------------------------------- 第二十一週 「波紋」 3月29日(月) 晴れ 「タケシ」さんを失って騒然とした「希望の世界」。僕は何も言えません。 誰かが「やっぱり、あんなの嘘だよね?」と言ってます。 「きっとタケシは何かの事情でネットに繋げてないがけだよ。」 「そうだよね。アレが本当にタケシ君だって保証は無いもんね。」 「そうだけど・・・・・・・・・・ねぇsakky、何か知らない?」 「うん。私には何もワカンナイよぉ。」 僕は嘘つきです。 3月30日(火) 雨 チャット中、突然「渚」さんが語り始めました。 「あのね・・・・・私、みんなには黙ってたけど・・・・・タケシ君と・・・・・会ったこと有るんだ・・・・・・・・・。」 何を言い出すんだ急に。そんな事言わなくていいことじゃないか。突然すぎるよ。 「ICQでイイ感じになって・・・・二人だけで会って・・・・・・結局、私はフラれちゃったんだけどね。」 ああ、そう。そうなんですか。分かったからそれ以上言わないで下さい。 「でね、でね、その時、本名教えてもらったんだけど・・・・・・・・・・・・・・・・杉崎武志さん・・・・・だったよ。」 ・・・・・・・・・・知ってる。僕だけは知ってるんだ。でも、これでもうみんなも知ってしまった。 言わなきゃいいのに。言わなきゃ「あんなの嘘だよ」で済んだのに。余計な事を。 なんで言うんだよ!畜生!これ以上僕を苦しめないでくれ! 杉崎先生、ネットナンパは初めてじゃなかったんだな。「渚」さんと付き合っちゃえば良かったのに。 みんな真剣に答えてないでサ、もっと楽しい話をしようヨ。 ・・・・・・・・・・・・・考える事が多すぎる。頭の中がゴチャゴチャしてきた。今日はもう休もう。 これからどうなるんだろう。 3月31日(水) 曇り 「本当にタケシが殺されたのなら、一体誰がそんな事を?」 様々な仮説が飛び交います。僕も形だけ議論に参加しました。 僕だって知りたい。でも、そんなの調べようが無いじゃないか。 それに、「希望の世界」に書き込まず、ただ見てるだけの人もいるかもしれない。 「タケシ」さんを知ってるのは僕たちチャット仲間だけじゃない。 この広いネット世界の中、「処刑人」を見つけ出すのは不可能に近いです。 どうしようもないです。 4月1日(木) 晴れ 僕はただ、辛い現実を見ないですむネットの世界に逃げ込んだだけです。 苦しんだり悩んだりする為にこんな事してるんじゃない。なのに、なんで邪魔するんだよ! また、「密告者」が掲示板にやってきました。「アンタ、踊らされてるよ。」と一言だけ残していました。 意味が分からない。変な事はもうやめてくれ!もう嫌なんだよ! すぐに削除したけどチャットで話題になってしまいました。 「渚」さんが「なんか、最近荒れてるよね。誰か心当たり無いの?」と言いました。 「TOMO」さんが「無いよ〜。私にもワケワカンナイ〜」 「三木」君も「僕にもわかりません。」、「えんどうまめ」さんは「タケシの事といい、俺にはさっぱりだよ。」 僕の番だ。さあ何て答える?「実はね、私・・・・・・・・・・・・・」・・・・・・・・・・・・・・・・・・駄目だ! 書きかけた文章を全て消して、新しく打ち直しました。「私も何も知らないよ〜。」 今日は4月1日じゃないか。嘘をついても大丈夫な日じゃないか。エイプリルフールなんだから! ・・・・・・・嘘が、積み重なって行きます。 4月2日(金) 曇り 確実に、おかしくなっていく。 今日メールチェックしたら、変なメールを受信しました。差出人は「anonymity」 たった1行でした。「takesiwokorositanohaomaedaro」最初見たとき、何て書いてあるのか分かりませんでした。 よく見ると、それはローマ字読みで読むことが可能です。「タケシヲコロシタノハオマエダロ」 僕じゃない。僕じゃないんだよ。こればっかりは本当に僕じゃないんだよ! 杉崎先生。本当に死んでしまったの?先生が生きてれば何もかも解決するのに。 もう一度、じっくりと例の事件の新聞を読みました。 「被害者は教員杉崎武志さん(25)、発見時には既に死亡しており・・・・・。」・・・・・・・死亡。死んでる。 死亡。死亡。死亡!この重い言葉が僕にのしかかってきます。僕はもうこの呪縛から逃れられない! 希望の世界。杉崎先生の死。殺人依頼掲示板。処刑人。密告者。anonymity。これは偶然の一致か? そんなわけない。全部、とは言わないまでも幾つかは見えない糸で繋がってる。 どうやって、その糸を見つけだす?それに、見つけてどうすればいいんだ?でも、やらなきゃいけない。 少なくとも「殺人依頼掲示板」と先生の死は何か関係してるはず。その繋がりを探し当てない限り僕は。 僕は前に進めない。 4月3日(土) 晴れ 「anonymity」からのメールは差出人のアドレスがありません。アノニマスメールというのを聞いた事があります。 差出人不明。こうなると奴の身元はわかりません。とりあえず「anonymity」は保留にしておこう。 「処刑人」。こいつを見つけだすにはどうしたらいいんだろう。 ネットを徘徊して身元を割り出す方法を調べてみたけど詳しいことはよくわからなかったです。 ただ、基本的には「リモートホスト」を見れば分かるそうです。僕にはこれくらいの知識しかありません。 でも、やらなきゃ。僕は先生の死に対する責任を取らなきゃいけない。 「殺人依頼掲示板」のソース。取って置いて良かった。どんなけ労力が必要なのか想像つかない。 頑張るしか、ない。 4月4日(日) 曇り 以前お気に入りに登録したアンダーグラウンドの掲示板。今は、違う目的で覗いてる。 「処刑人」を見つけだすまで、たどり続けてやる。リンクからリンクへ。 広がる闇の中で、たった一人を見つけだすのはとても難しいかもしれない。 今日も数時間かけて色々なサイトを巡ったけど、見つからなかった。 ソースにリモートホストが載ってない掲示板もある。何処に居るんだよ! でも、一つ分かったことがある。アングラに限定されてるのかわからないけど、そこに来る人たちの特性。 色々な掲示板を辿ってると、同じ人を何回もみかける。リモートホストも一緒だった。 ネットでは、「書き込む人」と「書き込まない人」がはっきりしてるんじゃないのかな? どんなにカウンターが上がっても、見てるだけの人はずっと見てるだけ。 逆に、書く人は至る所で結構書き込んでる。違う名前を使ったりする事もあるだろうけど。 ある掲示板に飽きたら他の掲示板。実際発言する人ってのは見てる人全体の中のごく一部に過ぎない。 だから、「処刑人」も他の所に出没してるはず。 第二十二週 「追跡」 4月5日(月) 晴れ 「処刑人」を捜してる最中、変なサイトを見つけました。 「滅望の世界」と題されたそのサイトは、作りが「希望の世界」に酷似しています。 管理人は「カイザー・ソゼ」という奴で、アングラ系掲示板にときどき書き込んでました。 発言のたびに自分のページのリンクを張ってました。でも、「滅望の世界」はとても寂れています。 そこにある掲示板もほとんどの発言が自分のばかりで、カウンターも全然上がってないようです。 それにしても「希望の世界」に本当によく似てる。最初見たとき凄くびっくりした。 一応「カイザー・ソゼ」のリモートホストをチェックしましたが、「処刑人」のとは一致しませんでした。 何なんだここは。 4月6日(火) 雨 見れば見るほどそっくりです。これは絶対「希望の世界」を意識して作られてる。 「処刑人」を捜すのも忘れてませんが、少し時間を割いて「カイザー・ソゼ」の足取りも辿ってみました。 アングラでは当たり前のように他人を中傷するような発言が飛び交ってますが、こいつも同じ様なものです。 「カイザー・ソゼ」はアングラの典型の様な感じですが、少し前のログを見ると初心者を漂わす発言もしてる。 別に気に止めるような存在じゃないけど、「滅望の世界」のリンクは必ず張ってます。 相変わらずカウンターも上がってないけど、このサイトは怪しすぎる。何故ここまでそっくりなんだろう。 ・・・・・・・・・・・そう思った矢先でした。なんとなく見てみた「滅望の世界」に張られたリンク。 そこには見覚えのあるあのページ・・・・・・・・・・・・・・・・「殺人依頼掲示板」が、張られてました。 「カイザー・ソゼ」。お前は何者だ? 4月7日(水) 雨 「カイザー・ソゼ」が「殺人依頼掲示板」を知っててもおかしくありません。 奴が良く来る掲示板にも「殺人依頼掲示板」のリンクは張ってました。でも、「滅望の世界」と絡んでくると・・・。 「希望の世界」を知ってるとしたら。依頼されてるのが「タケシ」だと知ってたら。・・・・・知ってるの、か? 「カイザー・ソゼ」!何処まで知ってるんだ!どうやって「希望の世界」を知ったんだ! これで「実は何も知らない赤の他人」なんて事だったらそれはそれで恐ろしいです。 けどそんな事は無いと思います。それほど「希望の世界」と「滅望の世界」は似すぎてる。 「処刑人」と「カイザー・ソゼ」。追跡する奴が二人になった。かなり時間がかかりそうです。 「希望の世界」もおろそかにいちゃいけない。みんなとちゃんと会話しとかないとsakkyが怪しまれる。 今日もまた、夜更かしか・・・・。 4月8日(木) 晴れ そうなのか?それはつまり、そうゆう事なのか? 「カイザー・ソゼ」を追跡してると、しょっちゅうリモートホストが変わってて訳が分かりませんでした。 でも、ある日を境にその日以前は全て同じリモートホストになってます。それはあっけなく見つかりました。 奴は2,3カ所で同じ質問をしてました。「串って何か教えろよ。」と。 それに対して「初心者は消えろ」や「厨房うぜぇ」のレスはありましたが、親切な人が詳しく教えてくれました。 僕もそこから「串」について詳しく書いてあるページにいってみました。 ・・・・・・・・プロキシサーバー。簡単な設定でリモートホストを変えられる。アングラでは常識らしいです。 「カイザー・ソゼ」もその発言以降は明らかにプロキシサーバーを経由してました。 そして、それ以前はナマIPがそのままリモートホストに載ってます。・・・・・・・・「処刑人」のリモートホストです。 「串って何」発言は主に3月25日付近に見られました。それより以前のログは殆ど残ってないけど充分です。 さぁ、本当に「カイザー・ソゼ」と「処刑人」は同一人物なのか?確実に確かめる方法はないのか? 何かいい方法は。 4月9日(金) 晴れ 「処刑人」こと「カイザー・ソゼ」が毎日のように来る掲示板。今日も来てました。 ここの掲示板はリモートホストを見ることができないタイプです。 ・・・・・・・・・僕もそこに書き込みました。     前科一犯 投稿者:処刑人 投稿日:04月09日(金)       俺、人殺した事あるんだぜ。人間って案外あっけなく死ぬもんだな。       T君、悪く思うなよ。kekeke! あとは待つだけです。 4月10日(土) 雨 罠にかかった!昨日の僕の発言に「カイザー・ソゼ」からレスがありました。 ただ一言、「処刑人」の発言のすぐあとに「↓こいつ、騙り。」と書き込んでました。 何故騙りと分かるんだ。リモートホストのチェックはできないのに。確かめる方法なんかないだろ? よっぽどインターネットに詳しくて専門的な知識を持ってるのなら話は別です。 でも「串って何?」と聞いてるようなヤツがそんな高いスキルを持ってるわけがない。 じゃあなんで騙りだと分かったか。簡単な事です。「カイサー・ソゼ」が「処刑人」本人だから。 もう間違いない。「カイゼー・ソゼ」、お前には聞きたい事がたくさんあるんだ。 直接話をしようじゃないか。 4月11日(日) 雨 「滅望の世界」。そこの掲示板にはここ最近「カイザー・ソゼ」以外誰も書き込まないでとても寂れてる。 しょうがないな。僕が書き込んであげよう。名前は何がいいかな・・・・・・。「王蟲」なんてのはどうだろう。 串の設定もちゃんと変えておいた。僕は、ここでは「王蟲」になる。     お気に入り追加 投稿者:王蟲  投稿日:04月11日(日)       ここ、なんかクールなサイトじゃん。気に入ったよ。       「滅望の世界」って題名がまたいいね。カイザー・ソゼ。アンタなかなかセンスある。       これからも来させてもらうよ。よろしく。 クールなサイト。センスある。・・・・・・・・・・・そんな事本気で思ってるわけありません。 嘘なんかいくらでもつける。何だって言える。「王蟲」の存在自体が嘘なんだから。 「希望の世界」のsakky。「滅望の世界」の「王蟲」。どちらも僕。でもそれを知ってるのは僕だけ。 真実は闇の中に。 第二十三週 「煽動」 4月12日(月) 晴れ 早速のレス。「王蟲、書き込みサンキューな。もしかしてNSCから来た?違ったらごめん。」 僕はそれに対して「うーん、それは知らないな。ここはたまたま見つけただけだよ。」と返しておきました。 さて、これからが本番です。次のは露骨にアングラ的なヤツにしてみよう。名前は・・・・・「SEXマシーン」     You're so cool !! 投稿者:SEXマシーン  投稿日:04月12日(月)       王蟲に教えてもらって来たけど、結構いいトコだな。       「俺の日記」がかなり共感できる。考え方とか俺と似てるかもな。 そう。「滅望の世界」には「希望の世界」の「私の日記」の部分に「俺の日記」というものを掲載しています。 僕自身sakkyの「私の日記」はちょっとづつ更新はしてます。当たり障りのない事がかり書いているけど。 「俺の日記」は日常の出来事をいかにもアングラって感じで書き綴ってる。これがこのページの売り物らしい。 何処のサイトでも、メインとなってる所を誉めれば作り手にとっても悪い気はしないはず。 次はどんなヤツがいいかな。 4月13日(火) 晴れ アングラ系掲示板で何かと目立つのは、女性。女性はアングラでは重宝されます。 次のヤツは決まり。女だ。名前は一目で女と分かるのがいい。・・・・・・そうだな、「紅天女」でいこう。     なんか良さげね 投稿者:紅天女  投稿日:04月13日(火)       私も王蟲に教えてもらって来ちゃった。ホント「俺の日記」いい感じね。       女の私でも読み応えあるし。次回の更新楽しみにしてま〜す。       >SEXマシーン       あら、アナタも来てたの。相変わらず凄い名前ね。 「王蟲」と「SEXマシーン」の発言も忘れちゃいけない。一日最低一回は発言するようにしとこう。 そのたびに串の設定の変えるのは面倒くさいけど仕方ない。串のリストはいくらでもあるから平気だけど。 「カイザー・ソゼ」もそのたびに反応してくれる。結構几帳面な奴かもしれない、なんて思ってみたりした。 あと一押し、だな。 4月14日(水) 晴れ アングラは基本的には怖いところ。でもそんな中にも煽り、騙り、中傷等をしない言ってみれば「大人」もいる。 「大人」でなくてもそれに近い親切な人、例えば串の詳しい説明とかしてくれる人。 人なつっこくて親しみやすい、最後のヤツはそんな感じでいこう。爽やかな名前がいいな。・・・「クラッシュ・B」     やあ!初めまして 投稿者:クラッシュ・B  投稿日:04月13日(水)       僕も王蟲さんに聞いてやってきました。なんだかいつものメンバーが勢揃いしちゃったね。       カイザー・ソゼさん。日記読ませてもらいましたよ。はっきり言って、面白い!       今後も期待してますよ! ・・・・こんなもんでいいかな。これ以上増やす必要もないだろう。あまり増やしすぎると僕も大変だし。 「王蟲」、「SEXマシーン」、「紅天女」の発言も欠かさない。 「SEXマシーン」は「紅天女」に対するレスとして「この名前気に入ってんだからほっといてくれよ。」 そのすぐ次に「王蟲」が「また名前の話か。初めて来る掲示板ではいつもやってるな、二人とも。」 「紅天女」は「クラッシュ・Bさん、初めまして!(嘘)。私もあの日記面白いと思いま〜す。」 「カイザー・ソゼ」は面白い様に反応してくれます。「日記の更新がんばるぜ!」なんて言ってる。 誰も見ちゃいないよ。 4月15日(木) 曇り 「もしかしてみんな知り合いなのか?」と「カイザー・ソゼ」が聞いています。 4人とも口をそろえて「その通り」と答えておきました。仲間同士の会話もさりげなく混ぜておきます。 「みんなネットで知り合ったんだよ〜。」とか「考えてみりゃいっつも一緒にいるよなぁ、俺達。」とか。 「滅望の世界」にチャットが無くて良かった。さすがにチャットだと自作自演にもツライものがある。 掲示板、見てる人いないだろうな。最も、見られてても何て事ない内容なので構わないけど。 トップページのカウンターも僕が更新ボタン連打してるから上がってるように見えるだけ。 「カイザー・ソゼ」。カウンター上がって喜んでるか?本当は僕とお前の二人しか居ないのに。 もっと煽ってあげよう。 4月16日(金) 晴れ 「俺の日記」が更新されてます。適当に「面白い」とか言っておきました。 掲示板はほとんどチャット状態と化しています。「今誰か繋いでる?」から始まって「繋いでるよー」と言う風に。 「カイザー・ソゼ」も加わってきました。「なんか賑やかだな」と言ってます。 「紅天女」に「ごめんね。チャット状態にしちゃって。ログがどんどん消えてくぅ〜。」と答えさせると 「いや、構わないよ。賑やかな方が楽しい。」と返してきました。よし、こいつ完全にハマってるぞ。 今日1日だけで「カイザー・ソゼ」はかなり溶け込みました。僕の創り出した虚像達を相手に喜んでる。 仲間意識を持ち始めてるのが目に見えて分かります。カケラも疑いを抱いてない。 そろそろいくか。 4月17日(土) 晴れ 盛り上がってきた所に、温めて置いた話題を振りました。 「ねぇ、カイザー・ソゼもアレに呼んでみない?」 「おお、いいねぇ。せっかく仲良くなったんだから、是非是非。」 「賛成です!と言うわけで、カイザー・ソゼさん。僕ら来週の土曜日オフ会やる予定なんですけど、来ます?」 「てゆーか、絶対来い!」 「紅天女」、「王蟲」、「クラッシュ・B」、「SEXマシーン」。総動員で煽り立てました。 「処刑人」。お前には聞きたい事がたくさんあるんだ。直接話をしようじゃないか。 杉崎先生の事、忘れてるとは言わせないぞ。僕はしっかり覚えてるんだからな。詳しい話を聞かせてクレヨ。 その為に自作自演を繰り返してるんだから。このオフ会では僕がお前の処刑人になるんだ! カイザー・ソゼ!来い! 4月18日(日) 雨 オフ会に対するヤツのレスはこうでした。 「来週の土曜かぁ。俺ちょっと用事あるんだよなー。今回は遠慮しとくよ。また誘ってくれや。」 ・・・・・・冗談じゃない。失敗か!?ああ、もうっ!なんで用事なんか入れるんだよ! ・・・・・・・・・・・・待てよ。ただ単に警戒して「用事」と嘘ついてるだけかもしれない。 仮に用事があったとしても、それ以上に興味を引けば来るかもしれない。まだ終わったわけじゃないぞ! カイザー・ソゼ。いや、処刑人!直接会うまで諦めないからな!勝負はこれからだ! 絶対、逃がさない。 第二十四週 「漆黒」 4月19日(月) 雨 新たにメールのアカウントを2つ取得しました。一つは「王蟲」用で、もう一つは「紅天女」用です。 「カイザー・ソゼ」宛てにメールを送りました。まずは「紅天女」から。 「せっかくなんだから来ようよ〜。用事なんかサボっちゃえ!」など甘えた内容を書いて送りました。 次の「王蟲」のメールでは「来た方がいいよ。イイ思いできるのに・・・・・・。こんなチャンスめったにないよ。」 イイ思いが具体的にどんなモノなのかは詳しく書かず、ほのめかすだけにしておきました。 「滅望の世界」掲示板でも他のメンバーの発言を欠かさない。まだまだ煽るぞ。 相変わらず「希望の世界」でも当たり障りのない発言を続けてます。 ・・・・・・「カイザー・ソゼ」。実は「希望の世界」の誰かってオチはないよな? リモートホストをチェックしてた時は一致した人はいなかった。でも、可能性は捨てきれない。 全てを疑わないと。 4月20日(火) 晴れ 両方とも返事が返ってきました。すぐに返事をくれるのは都合がいい。こいつ意外とマジメなのかもしれない。 「紅天女」の返事には「いや〜なんとかなるかもしれないけど、やっぱ無理っぽいかな。」と言ってます。 「王蟲」の方では「何?イイ思いできるって?どんなこと?」と、見事に食らいついてきました。 またメールを送ります。「王蟲」は「男なら、来るべきだね。一つ教えてあげよう。クラッシュ・Bって実は、女。」 「紅天女」は「いっつも小さな部屋みたいなとこ貸し切ってオフ会してるんだけどさ〜。お酒飲んだりして ワケわかんなくなっちゃったりするのも面白いよ。クラッシュ・Bの秘密とか、教えてあげちゃおっかな〜。」 等々書いて送りました。・・・・・・もう明日のメールで勝負しよう。あまり時間をかけるわけにはいかない。 今週の土曜日には、絶対間に合う。間に合わせる。この際多少強引でも構わない。 行くしかない。 4月21日(水) 曇り 返事のメールはまだ来てません。ここで一気に畳みかける。 「紅天女」から送るメール。 「今日もメールしちゃいま〜す。オフ会やっぱり無理かな?楽しいのにな・・・・・。  私とかクラッシュ・Bとかね、お酒飲むと大胆になっちゃうんだよ〜。  カイザー・ソゼってどんな人なのか興味あるな〜。お酒は入った私、何するかワカンナイかも。  オフ会やると毎回同じ事繰り返しちゃうんだよね。好きでやってることだから構わないけど。  結構その気になっちゃり・・・・・・・・。これ以上は秘密!知りたかったら来てね!」 「王蟲」からのメールはこうです。 「イイ思い、知りたい?知りたい?仕方ないな。教えてあげよう。  ハッキリ言うよ。紅天女とクラッシュ・Bはヤリマン。わかるだろ?ヤレるんだよ。マジで。  SEXマシーンって居るじゃん。あいつ最初は違う名前だったんだよ。でも最初のオフ会以降ああなった。  俺もあいつもびっくりしたんだよ。あんな簡単にヤラしてくれるとは思わなかったからな。  もうオフ会のたびに乱交状態ってわけ。あの二人、単なるH好きだな。相手は誰でもいいんだよ。  だからカイザー・ソゼも呼ぼうとしてるんだよ。いい加減俺達にも飽きたのかな?(笑)  まぁそういうことだ。ヤリたきゃ来なよ。ただこれだけは言っておく。来れば、100%ヤレる。」 これは最後の賭です。もしカイザー・ソゼが女だったら何の効果もありません。 それに、疑われたらそれまで。もう打つ手はないです。土曜日まで日がない。これで決まらなきゃ終わりだ! 頼む!来ると言ってくれ! 4月22日(木) 晴れ 今日のメールチェックには本当に緊張しました。返事は、イエスか?ノーか?それとも・・・・・・・。 「カイザー・ソゼ」から「紅天女」へのメールです。 「また秘密?なんか気になるな。確かめる必要あるかも。  そんなに誘われちゃ断ると男が廃る!と言うことで、やっぱオフ会行くことにしたよ。  何気に緊張なんかしちゃったりして。まぁなんとかなるな。じゃ、オフ会で会おうぜ!」 「王蟲」へのメール。 「マジで?マジで?こりゃ行くしかないっしょ。ホラ、やっぱ俺も男だし。  やべ、なんかもう立ってきた。(笑)土曜の用事なんかよりこっちの方が遙かに大事だわ。  そう簡単にH出来るチャンスなんか転がってないしな。逃すわけにはいかねーよ。  期待してるぜ。じゃ、オフ会で会おうな!」 ・・・・・・・・・・・・・・・・捕らえた!ついに、ヤツと直接対峙することになった!良し良し良し良し。 掲示板の方でも「やっぱ行く。」と宣言してる。ふう。二日前か、ギリギリだったな。危ない危ない。 さて、何処で会おうか?・・・・・・やっぱり、杉崎先生と待ち合わせたあの場所でいいだろう。 そういやこの前行ったとき、裏通りの方に行くと人が全然いなかったな。これは使えるかも。 待ち合わせ時間と場所を指定してメールで送りました。処刑人。来るのを楽しみにしてるよ。 待ってるからな。 4月23日(金) 滝のような雨 ヤツから「王蟲」にメールがありました。明日の服装とか書いてありました。 「みんなにも伝えとく。うまく見つけるよ。じゃ、明日会おうな!!」と書いて送り返しました。 ついに来た「処刑人」との対面。僕は以前「トオル」を殺すために用意したナイフを取り出しました。 刃が冷たいです。 4月24日(土) 闇の中に雨が降り続けてる 今日の日記は長くなりそうです。これを書いてる今も震えが止まりません。 今日は待ちに待った奴との対面でした。ナイフをポケットにしまい込み、家を出ました。 行く途中、ずっと「カイザー・ソゼ」はどんな奴なのか考えてました。 大学生か、社会人か、それとも高校生か。意外に「ヤリたい」とか言っといて女だったり。 「希望の世界」の住人の可能性もあるし、僕の知ってる他の誰かかもしれない。 色々考えてるうちに、駅に着きました。そして、約束の場所へ。時間もぴったりでした。 僕は昨日のメール通りの服装をしてる人物を捜しました。老若男女問わず、全ての人をチェックしました。 そいつは、居ました。見事にメール通りの格好です。でもそいつは・・・・・・・・・・。 奴は、大学生でも、社会人でも、高校生でもありませんでした。勿論知ってる人でもありません。 あの容姿、はっきり言って・・・・・・・・・・ガキ。童顔と言えど高校生じゃ通用しない。アレは、中学生。中坊だ。 そいつと目が合いました。僕は視線を外さず近付いて行きました。奴もこっちを見てます。 なんと言うか、何も知らない純粋な笑みを浮かべて、期待のまなざしでこっちを見てるのが逆に痛々しい。 すぐにその笑顔が消える事になるとは知らずに・・・・・・・・・。 僕の方から話しかけました。「カイザー・ソゼさん?」そいつはまだ笑顔のまま「はい!僕です!」と答えました。 「王蟲です。」と僕は言いました。カイザー・ソゼはちょっとびっくりした様な顔をして「へぇ。」と言いました。 さらに続けて「あなたが王蟲さんなんですか。僕はてっきりく」僕はナイフを突きつけました。 雨が降ってて良かった。他の人には見えないように傘で隠せる。 カイザー・ソゼは最初呆気にとられてましたが、ナイフを見て「ひゃあ」と小さく叫びました。 「刺すワケじゃない。おとなしくついて来ればいい。」と耳元に囁きました。ソゼは震えながら頷いてました。 そう、この為にナイフが必要だったんです。殺すつもりなんて一切ありません。話を聞きたいだけです。 僕には力がない。だから相手をおとなしくさせるには武器が必要でした。 裏通りの方に連れていくと幸い人気はありませんでした。ここがダメなら他で、と考えててたけど杞憂でした。 「ど、ど、ど、どうするつもりなんですか?」と怯えた目をしながら聞いてきます。僕は言ってやりました。 「お前、『処刑人』だろ?人、殺しただろ?」 ソゼはさらに顔を強ばらせて「な、何で知ってるんですか!?あ、いや、どうしてそれを!?」と言ってます。 「どうして知ったかは話が長くなる。問題は、僕が『依頼人』だって事。」 もう泣きそうな顔で訴えてます。「あなたが・・・・依頼人・・・?だって、王蟲さんじゃないんですか?」 「そうだよ。依頼人だけじゃない。王蟲も、SEXマシーンも、紅天女も、クラッシュ・Bも、みんな、僕だ。」 ソゼは既に半泣き状態です。「そんな・・・・・。じゃ、僕、なんで?あ、僕が処刑人だから・・・あ、でも・・・・!」 「処刑人。お前、どうして殺したんだ?確かに依頼したのは僕だ。でも本当に殺すのは犯罪だろ?」 もう完全に泣いてしまってる小さな処刑人。「え!?あの人、死んじゃったんですか!?そんな、だって・・・!」 「何言ってるんだ!お前がやったんだろ!?どうやって殺したんだ。答えろ!」 顔をぐしゃぐしゃにして答えてました。「僕、僕、殺してないです!僕は処刑人だけど、殺してないです!」 わけがわからない。「処刑人なんだろ!?なんで殺してないなんて言えるんだよ!?」 「だから、僕、『処刑人』て名前で掲示板に書き込んだだけなんです!嘘の発言なんです!なのに・・・・・!」 何かがガラガラと音を立てて崩れていきます。こいつじゃなかった。杉崎先生を殺したのはこいつじゃない! また1からやり直しだ!しかも今度は、何の手がかりもない!ああ、僕のやってきたことは、無駄だったのか? 僕が途方に暮れてると、ソゼがおどおどしながら話しかけてきました。 「あの・・・・・・・あの人、やっぱり『タケシ』さんなんですか?」 ちょっと待て。何がどうなってるんだ!?なんでソゼが「タケシ」さんを知ってるんだ!? 「お前!!『希望の世界』を知ってるのか!?どうなんだ!?」 「え?あ、あの、NSCで・・・・・あ、僕、てっきり王蟲さんも知ってるのかと・・・・・・・・。ごめんなさい!!」 「何だよ。NSCって何だよ!『希望の世界』が関係あるのか!?『滅望の世界』も関係してるのか!?」 「あ、だから、関係って言うかその、・・・・・・・・・・・・あの・・・・・・・・・・・・・・・もしかして、あなたがsakkyさん?」 完全に、パニック状態です。僕にはもうわけがわからない。考えれば考えるほどわからなくなる。 そうさ。僕がsakkyだ。sakkyだよ。悪かったな!僕がsakkyで!ああああああああああああああああああああ!! ちくしょう!!カイザー・ソゼ!!僕がお前を罠にはめたはずなのに、僕の方がやられてるみたいだ!! 僕はこの時、完全に自分を見失ってました。何故か、カイザー・ソゼにナイフを向けてました。 ・・・・・・・・・・・・・・・・これがいけなかった。ソゼはナイフを構えた僕を見て・・・・・・・・・・・・・・・・・逃げました。 「ごめんなさい!ごめんなさい!」と泣き叫びながら、雨の中に消えていきました。 僕にはもう後を追う気力は残ってませんでした。なにもかもが嫌になった。 降りしきる雨の中、僕も傘をささずに家路につきました。 結局、何も分からなかった。杉崎先生を殺したのは誰なのか。NSCって何なのか。 今思うとカイザー・ソゼを逃がしたのは大きな失敗だった。でも、今同じ状況になっても・・・追う気力はないな。 窓の外に広がる闇。まるで今の僕の心を写してる見たいです。真っ暗で、先が見えなくて。 この闇は、何処まで続いてるんだろう。 4月25日(日) 薄暗い曇り 僕は全く無駄なことをしてきたんでしょうか。早紀に誓って生きる決意をして以来、何かが変わった気がします。 世界が壊れてしまったのか、僕が壊れてしまったのか、それとも全てが壊れてしまったのか。 「ねぇ。」何も見えない闇に向かって小さく叫びました。「僕は、生きてて大丈夫?」 誰も答えてくれませんでした。 - 第6章 悠久の闇-  完 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・第7章へ。